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LIGHTBULBでMTMシューズを初オーダー【①注文編】
外反母趾でいつも革靴選びに難儀する自分の足。
ようやく積年の悩みを解決してくれそうなブランドに出逢えたかもしれません。
それは『LIGHTBULB/ライトバルブ』という2023年に本格始動した新鋭ビスポークシューズブランドです。
『かも』としたのは現時点でまだ靴が完成していないから。
まず惹かれたのはラスト(木型)底面の立体感。
効率重視の量産靴ではまず見られないアウトスタンディングな形状はいかにも履きやすそうで、なんなら色気さえ醸しでてませんか?(個人の感想です)
緻密な形状をしたこのラストの設計は義肢装具士、いわば足のスペシャリストが手掛けたというところも興味深いポイントでした。
とどめに、このラストを使用した靴がビスポークよりお値頃なパターンオーダー(MTO・MTM)で手に入れることができることを知り購入意欲は頂点に。
これが最良の選択であることを願いつつ、2年半の準備期間を経て(資金調達が停滞してただけ)オーダーすることができたのでレポートします。
LIGHTBULBのMTMを検討している方の参考になれば幸いです。
義肢装具士としてインソールや整形靴などで多くの臨床経験をもつ足のスペシャリスト野口達也と、オーダー靴底付けのスペシャリスト外林洋和がプロデュースするビスポークシューズブランドです。
LIGHTBULBでMTM靴をオーダーしてから完成するまでの大まかな流れがこちらです。
- iD-FOOTによる足の採寸
- フィッティングシューズを履く
- デザインと仕様の決定
- 仮靴の試し履きと検証
- 仮靴の情報をフィードバック
- 本靴完成・納品
今回の記事は①~③までの内容です
LIGHTBULBに惹かれたところ
準備期間(資金調達)中にネット情報やSNSを読み漁ったり行動したりして、LIGHTBULBに対する自分なりの印象を整理してみようと思います。
履き心地をマストに考えるブランド
私がLIGHTBULBにもっとも魅力を感じるのはラストだと冒頭で述べましたが、その理由は『現場での臨床経験が豊富な義肢装具士が自ら設計・開発したラスト』で製作された革靴を履いてみたいと思ったから。
さらにLIGHTBULB自ら「私達が靴作りでいちばん重要視するのは”履き心地”である。」と言われたら選ばない理由が見つからない。
勝手なイメージですが、ビスポークシューズブランドのラストって拉麺のスープレシピみたいに門外不出なところがあって、情報も少なくミステリアスだったりしません?
LIGHTBULBは「義肢装具士という医療従事者がドレスシューズのラストを設計しました!」と宣言し設計情報も割とオープンで、形状を見てラストの良し悪しを判別できる知識のない私には門戸が広く感じました。
(注)情報を開示することが善、しないことが悪、と言いたいわけではありません。
外反母趾の痛みを感じることなく、長時間着用しても足裏の疲労感がない履き心地の革靴を探し求めていた私には説得力があり”信頼のおけるブランド”に映ったのです。
ビスポーク出身だから品質に不安なし
最優先課題である履き心地問題がクリアできた(とした)なら、今度はデザインや技術的な部分に目が向いてしまうのは革靴好きの性(さが)です。
快適な履き心地が確保できても、デザインや作りがいま一つだと気分が上がらないのは事実。
結論を言うと、LIGHTBULBは立ち上げ当初はBespokeのみで運用していたブランドなので品質に不安は感じません。
実際にサンプルを手にした時も、パターンや仕上げなど高い水準で仕上がっていて好印象だったし、MTO開始以降に外部委託する工程が増えているとしても品質コントロールはしっかり行われているようです。
MTO/MTMのデザインは、トラディショナルなオックスフォードやダービーが中心。好みはあると思うが私は好き。
底付け(製法)は機械縫いだが、履き始めの硬さを解消する『ダイレクトグッドイヤーウェルテッド』を採用。(ここも履き心地1stを感じます)
さらにオプションを駆使すればデザインや素材、底付け方法の変更など柔軟な対応が可能。
デザインバリエーションがまだ少ないこと以外は個人的には死角はないと思っています。
伝統を尊重しつつ新技術も取り入れる
新進気鋭ブランドだから、というわけではないが同業他社にはない技術も積極的に採用していて、たとえば採寸には『iD-FOOT』というシステムを使い、スマートフォンによる足の3D計測をする方法を導入している。独自開発したシステムではないが、精度の高い計測がおこなえるそう。
そこに足踏み動画と義肢装具士の知見(ここ重要)を独自に加え、各人に最適解を提案してくれる。
プロが足をきちんと診るという伝統をベースに、新しい技術を掛け合わせ融合させているのが印象的です。
私もLIGHTBULBのご厚意で『iD-FOOT』を自宅で使用し足の診断をしてもらったが、リモートなのに回内や偏平足を指摘されたりと貴重な体験をさせてもらいました。
ほかにも興味が尽きなかったので勢い余って『LIGHTBULBオーダーガイド』なる記事まで作ってしまう始末です。
よかったらご一読ください
東京受注会で念願のMTMオーダー
受注会参加に向けて事前に2つの準備をしました。
- 野口さんの確保
-
自由参加の受注会なのでかなりの混雑を予想し、DMして初日の朝一を押さえた
- デザインと仕様
-
運営者のひとり、外林さんとのDMやり取りでデザインと仕様の約8割を決めておいた
我ながらいい仕込みをした、と自画自賛しながら自宅を出発します。
受注会場到着
会場は東京・浅草橋駅から徒歩圏内にある『MULTI LAB.』。
LIGHTBULBとの親交も深い、セミオーダーを中心に展開するシューズブランドで、期間中の2日間はこの店舗を貸し切っての開催。
前回の受注会に参加(だけ)したので訪問は2度目です。
いちばん乗りに入店しLIGHTBULBの運営者、野口さんと外林さんにお久しぶりのご挨拶。
各々の近況を話す間もなく、お客さんの入店がポチポチ続きすぐ盛況状態に。
予想してはいたが、注目度の高さを感じながらいよいよオーダー開始です。
野口さん押さえておいて正解だった
フィッティングシューズの試し履き
まずはフィッティングシューズ(ゲージ靴)の足入れから。
一般的な『General』ラストと細身の『Narrow』ラストから選べるが『General』を選択。
靴を履き替える際、私の外反母趾を見て「合う靴を探すのに苦労されそうですね」と野口さんに言われるくらいには変形しております。
フィッティングシューズで少し店内を歩いたあと、野口さんと共に店舗前の道路に移動してアスファルト上の感触を確認。
フィッティングシューズとはいえ、店内だけでなく外も歩けるのはリアル使用を体感できて嬉しい。
何気ないかもしれないけど凄い
前回の受注会で試し履きは経験済みなのに、2回目でも独特なフィット感に驚きます。
ラストからイメージする通り、起伏した底面がやさしく足裏にジョイントしてくれる感覚が心地いい。
外反母趾部分への当たりはあるものの、この時点で今まで履いたどの既成靴よりも痛みが少なくて好感触。アーチが崩れまくりの外反母趾さえも想定したラスト設計なのだろうか。
とはいえ、このままでOKとはいかないので、右の外反母趾部分と右外側の踵廻りに軽い圧迫感を感じることを野口さんに伝えます。
店内に戻って靴を脱ぎ、足および関節の状態を触診チェックされたあと、外反母趾部分の痛み方(靴を履いてなくても痛むのか履いたときに痛むのかなど)についてのヒアリングに返答。
以上を経た野口さんの提案は、万全を期するならMTMだがMTO+外反母趾部分の盛り調整でもいけるかもしれないとのこと。
MTM一択と思っていただけにこの提案は寝耳に水で(安く済むかも♪)という思いが一瞬よぎったが、自分用にラストをモディファイドするMTMオーダーにすることを伝えて了承されました。
スマートフォンで足を計測
次は『iD-FOOT』による測定です。
MTMはラストをモディファイドするため、自分の足の計測データは必須。
iD-FOOTは以前、リモート環境で体験済みですが、どうせなら最新のデータで靴を製作してほしいので改めて測定を依頼しました。
自分のスマートフォンを渡し、野口さんが動画撮影してくれるという贅沢なひととき。
左右の足それぞれ一周した動画と、足の指を握る/開くをした動画を撮影。
足踏み動画とアンケートは前回測定時で共有済みのため今回は省略。
現地測定でもスマートフォンのみで完結するんですね。
直接接客ならではの採寸があるかと思ったが、違いは触診で関節チェックを数秒されたくらい。
受注会でも測定方法は変わらないということは、安心してリモートオーダーすることができる(つまりどちらでも同じ品質のフィッティングが得られる)ことが証明されました。
撮影した動画ファイルの容量が大きすぎてiD-FOOTにアップロードできないという”おまけ”(私のスマートフォン設定が原因)を乗り越えなんとか終了。
設定は事前に確認しておきましょう
野口さん、大変ご迷惑をおかけしました。
デザインと仕様の確認
最後にデザインや素材、ディテールの打ち合わせへ。
事前に約8割決めていた内容が私のオーダーシートに記載されていたので、それを見ながら追加訂正と最終確認を行ないます。
本来ならあれこれ言いながら決めていく悩ましくも楽しい時間は、淡々とした確認作業で終了。
選択する高揚感を現地で味わえなかったのは少し勿体なかったかもしれない。
オーダーはこれで完了。
野口さん、外林さんに挨拶をして活気づいている店をあとにしました。
デザインと仕様をほぼ固めて臨んだこともあるが、所要時間は30〜35分くらい。
「もう終わった?」というのが率直な感想です。
今回の受注会参加でLIGHTBULBの高いポテンシャルを直に感じ、運営者の野口さん・外林さんの静かに燃える熱に触れたことで、オーダーした靴への期待が一段と高まりました。
今回のオーダー内容
構想を実現するために、革の持ち込みといくつかのオプションを組み合わせました。
項 目 | 仕 様 |
---|---|
ラスト | MTM |
製法 | ダイレクトグッドイヤーウェルテッド |
デザイン | フルブローグオックスフォード ※ベースデザインとして |
アッパー | スエード(色はポロブラウン) 『C.F.Stead/Janus Calf』を持ち込み |
ソール | レザー 『Martin』にオプション変更 |
ソール 仕上げ | ・コバ幅:ドレス仕上げ ・コバ:両フマズのみ丸 ・ペイント:ナチュラル |
オプション | ・トゥをウィング⇒キャップに変更 ・メダリオン形状を変更 ・シャコ止めを手縫いに変更 ・先芯をレザーに変更 ・オークバークソールに変更 ・ヒドゥンチャネル仕上げに変更 |
スエードの『セミブローグオックスフォード』です
仮靴の完成まで4ヶ月
ラストの修正(モディファイド)を経て、仮靴ができるのは約4ヶ月後。
まずは仮靴の完成連絡を楽しみに待ちたいと思います。
詳細は次回の『②仮靴到着編』でレポートします!
最後までお読みいただきありがとうございました。