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LIGHTBULBでMTMシューズを初オーダー【④本靴完成/前編】

義肢装具士の野口達也氏がラスト(木型)設計し、靴職人の外林洋和氏とタッグを組むビスポークシューズブランド『LIGHTBULB/ライトバルブ』。
革靴が好きだけど外反母趾で悩む私が出会った期待のブランドです。
MTM(Made to Measure)でオーダーした靴が完成・納品されたのでレポートします。
今回は前編「外観・ディテール」について。
LIGHTBULBでMTMオーダーを検討している方の参考になれば幸いです。
- iD-FOOTによる足の採寸
- フィッティングシューズを履く
- デザインと仕様の決定
- 仮靴の試し履きと検証
- 仮靴の情報をフィードバック
- 本靴完成・納品

今回の記事は⑥を中心とした内容です
過去記事はこちら↓


セミブローグオックスフォード
ついにLIGHTBULBの完成品(本靴)が我が家にやってきました。
受注会オーダーから約3ヶ月で仮靴到着、ひと月ほど試し履きしたあと、約5ヶ月で本靴が完成。
単純計算するとオーダーから完成までおよそ9ヶ月なのですが、実際には11ヶ月掛かりました。
実は自己調達する革の入手に手間取り、革の到着まで本靴製作を2ヶ月待ってもらうというタイムロスがありつつの完成・納品です。
革の持ち込みは計画的に…
外観


届いた宅配便を開梱すると、中には緩衝材に包まれた黒無地のシューズボックスが。
蓋を開けると、革の(正確には鞣し成分の)香りを纏ったオーダー靴が現れました。



革の香りって好きなんです
完成した靴がこちら。








私の足は簡単にいうとボリューミーなので細足さんのようなシュッとしたフォルムにはなりません。
それでもカッコよく仕上げてくれたのが嬉しい。
なんとなく以前所有していたChurch’sを思い出しました。


シューツリーはラストに準じてアジャストされているので、靴とのフィット感が凄まじいです。
ずっしりとした木の重さがたまりません。


シューズバッグは非常にシンプル。
ビスポークで提供している(と思われる)片足ずつ収納/立体裁断/内側に縫い目が出ないタイプに変更できるのか確認すればよかったと若干後悔。
使用する機会は少ないので特段困りませんが。
仕様の詳細をまとめました
項 目 | 仕 様 |
---|---|
ラスト | MTM |
製法 | ダイレクトグッドイヤーウェルテッド |
デザイン | フルブローグオックスフォード (ベースデザインとして選択) |
アッパー | スエード 『C.F.Stead/Janus Calf』を持ち込み |
ソール | レザー 『Martin』にオプション変更 |
ソールの 仕上げ | ・コバ幅:ドレス仕上げ ・コバ:両フマズのみ丸 ・ペイント:ナチュラル |
オプション | ・トウをウィング⇒キャップに変更 ・メダリオン形状を変更 ・カンヌキを手縫いに変更 ・先芯をレザーに変更 ・オークバークソールに変更 ・ヒドゥンチャネル仕上げに変更 |
なお、パターン/アッパークロージング/釣り込みまでは外林さん(=よめせん氏)が手掛け、ウェルティングと底付けは提携工場で実施されました。
ディテール(カスタム箇所)
この靴にテーマやコンセプトはありません。
スエードとキャップのあるデザインが割と好きなので二つを組み合わせてみよう、という感じでオーダーしました。
それでも少しこだわりたい部分はあったので、下記を有料オプションで実現しております。
キャップトウ
オーダー時はセミブローグオックスフォードがレギュラー化されていなかったので(現在はあり)フルブローグオックスフォードをベースにパターン変更してもらいました。


キャップのバランスが仮靴では浅く感じたので、ベストと思える深さになるよう外林さんとDMや画像のやり取りをしながら調整しています。
セミブローグがラインナップされる前だったからこそ実現した要望だと思うので、レアな対応だったのかもしれません。
メダリオン


ラウンドトウのセミブローグにはオーソドックスな形状が合うと思い、LIGHTBULBが用意している種類の中からこのパターンを選びました。
全体の大きさは、自分が理想的と思う画像を提示していい感じに落とし込んでもらいました。
カンヌキ(シャコ留め)


羽根の根元にある縫い付けを手縫いに。
靴全体から見れば小さな部分ですが、手仕事による味わいを値ごろに導入できるのでお願いしました。
個人的にはジャケットのラペルにあるフラワーホールと同様、手縫いにすることで立体感が出てかなりいい雰囲気になったと感じています。
機能や強度は機械縫いでも大きくは違わないので完全に自己満足です。
先芯
完成時には見えない裏方パーツですが、あえて革素材に変更(標準仕様は化繊シート)。


自分としては「できるだけケミカルな材料は控えよう」くらいの気持ちでしたが、製作側の視点では革にすることでトウのボリューム調節や形の作り込みがしやすくなるそうです。
同じ理由でシャンクをスチールから革に変更できるか打診しましたが、ダイレクトグッドイヤー製法では変更不可ということで実現できず断念しました。
アウトソール
耐摩耗性に期待してオークバークソールに変更。
『JR by Kilger』や『J.&F.J.Baker』など数種類のオークバークソールが選択可能なので悩みました。




外林さんから各社の特徴や過去に扱ったことがあるソールはその印象を情報として貰ったうえで選択したのは、現存する世界最古のタンナーといわれる独『Gerberei Martin Gmbh(マーティン)』。
実際の摩耗性については経過レポートをしていけたらと思います。
併せて出し縫いの糸を底面に見せないヒドゥンチャネル仕様にしています。
アッパー(持ち込み)
アッパーはオーダー計画時から好きなスエードにしよう、と決めていました。
スエードは革の裏面(床面)を起毛させて外側に使用しますが、内側(銀面=スムース革なら外になる面)の処置を「除去する」ものと「そのまま残す」ものがあります。
詳しい効能は分かりませんが、私は銀面が残っている方が厚みがあって型崩れしにくそうな後者に惹かれるも、LIGHTBULBが用意するスエードは前者タイプ。
「では自分で用意します」となったのですが、これが思ったより難航することに。
最初に手配した伊某社のスエードが想定以上に納期が遅く、仮靴の検証が終了しても入手できていなかったのです。
これはアカンとなり、英C.F.Stead社の銀付きスエード『Janus Calf(ヤヌスカーフ)』を緊急調達したという経緯がありました。
このてんやわんやで約2ヶ月を費やします。。。


でも怪我の功名といいますか、ヤヌスカーフの茶の色合いと少し長めの毛足がこのセミブローグによく馴染んでいるので結果オーライでした。
今回はここまで。
後編の「フィッティング・履き心地」に続きます。

